知的財産部の実態は調査部署
知的財産部の主な業務は調査です。市場に自社の権利侵害品が流通していないかを調べたり、他社の開発動向を調べて重複投資や重複開発が起きていないかをチェックしています。ここで、他社の開発動向を知る手段として使われているのが、公開特許公報の収集です。公開特許公報は、誰が、いつ、どのような特許出願をしたのか、その内容を特許庁が公開しているもので、インターネットで誰でも自由に閲覧できるのが特徴です。
公開特許公報を使って、どのような競合他社が存在するのか、それは何社存在するのか、どのような技術アプローチを行なっているのか、どのような評価方法で何を基準に何を評価しているのか、このようなあらゆる人的、資本的、技術的情報を収集していきます。そして、得られた結果から参入分野を検討し、開発計画を立てていきます。まず文献調査から始まるのが大企業の開発プロセスの特徴です。
大企業の開発部隊は何度も何度も軌道修正を行う
的財産部の調査結果をもとに、参入する技術分野とアプローチを決定します。そして、自社の人的リソースから現実的な開発計画を立て、あらかじめ「この分野のこういう特許を取る」という具体的なアプローチを検討します。およそ1〜2ヶ月おきに、開発の途中経過とその時の最近の調査結果から、再度、重複投資や重複開発が行われていないか、市場に新しい開発商品が現れていないか、他社の権利侵害が生じていないかの調査を行います。
そこで、問題が見られた場合には、開発計画を修正し、例えばの他社の権利関係の問題で溶媒としてIPA(イソプロピルアルコール)を使用できないとわかったら、途中で他の溶媒を使用する検討を始めます。このようにして、大企業では常に最新の知財動向を見極めながら、何度も何度も開発の軌道修正を行いながら技術開発を進めていきます。
完成された発明は売りにくい
また、新技術は最終的に自社で製品として流通できる完成品にまでもっていく必要があります。新技術で特許を受けるのも大事ですが、自社で製品化を行い、流通に乗せることができる最終製品を作りやすく、自社にとって都合のよい権利範囲で特許を受けておく必要があります。最後の「自社にとって都合のよい権利範囲」にしておくことは、特許を受ける上で最も重要な点です。弁理士も、クライアントの事業特性をよく把握しないままに権利範囲を設定し、いざという時になって「実は使えない権利範囲になっていた」という事態も決して珍しくありません。
このような事情もあり、すでに完成された特許というのは売りにくいというのが実情です。また、大企業は本能的に技術が重複したらいかにしてかわすかという検討を日常的に行なっていますので、特にそのような事前対策がされていない特許であれば、容易にかわされて合法的に技術が転用・流用されることも珍しいことではありません。
テキストの入手方法
テキストは、フィラー特許事務所の物販サイト(Square店)から購入いただけます。
テキストは、普通郵便で発送します。
内容は、冊子、電子書籍(PDFバージョン)、このYouTubeとは別の解説動画(Vimeoで視聴)の3点です。
価格は5,500円で、同価格の無料相談(45分)がご利用いただけます。