開設:2024年12月13日
更新:2024年12月23日

シナモリーガル

大学任せにしない研究者のためのTLO

大学任せにしない研究者のためのTLO

大学でお金になる発明を完成させたら、その発明は誰のものになるのでしょうか。正解は発明を完成させた本人のものです。教授であれ、学生であれ、研究者であれ、原則として発明を完成させた本人がその発明の持ち主となります。

一方、特許法には職務発明と言って会社などに雇われている従業員が仕事の成果として完成させた発明については、最初から会社のものにしてもよいという「決まりを作ること」が認められています。この辺りの情報が一人歩きをして日本の研究者は頭を抱えてしまっています。ここで、研究者のための正しいTLOの情報を整理しましょう。

職務発明

発明の完成を約束した上で報酬を受け取っているか?

「大学で完成した発明は全て職務発明である」... このように説明されて納得がいかないという相談をフィラー特許事務所ではいくつも受けてきました。まず、特許法に職務発明という規定がされているのは事実ですが、職務発明というのは発明の完成を約束した上で報酬を受け取っている場合に問題となり、報酬の成果物として発明を完成させた場合にその発明を「職務発明として取り扱う」と定義しているというのが大原則です。

そして、仮に職務発明であってもその発明を特許出願できる人はあくまで発明を完成させた発明者本人のみであり、発明者が特許を受けた際にはその特許権について使用者には無償の通常実施権を認めるというのが職務発明の大前提です。しかし、使用者にとって無償の通常実施権だけでは権利が弱すぎるという理由で、勤務規則により自動的に使用者が特許出願できるように定めてもよいという規定ができ、直近では同じく契約により最初から使用者が特許出願できるように定めてもよいという規定に、徐々に使用者の権利が拡張されていったのです。

特許法は、あくまで「労使間でそのような決まりを作ってよい」という許可をしているだけで、具体的にどのような勤務規則や契約にしなければならないという内容にまでは踏み込んでいない点に注意が必要です。もし、大学から「大学で完成した発明は全て職務発明である」ということを言われて納得がいかないと言う場合は、まずは大学がどのような契約や勤務規則に基づいて、そのような主張に至っているのかを確かめなければいけません。これらは契約ですから、片方がそういっているからと言うだけで決着をつけてよいものではないのです。

職務発明

共同発明

発明の完成に必要な具体的な技術的思想を創作したか?

発明の完成者は特許権者になる立場にある人ということですが、「なぜこの人まで発明の完成者として名前を入れなければならないのか?」と疑問に思うこともあるでしょう。これは、先の「大学で完成した発明は全て職務発明である」という疑問とともに大いに現場の研究者の頭を悩ませている問題です。

原則として、複数人で完成させた発明を共同発明と言い、共同発明者全員が連名で特許権者となるというのが特許法の作りです。しかし、発明者といえるには、ある共通の課題の解決に対して具体的な技術的な思想を創作していなければいけません。解決しようとしている課題とは直接関係のない一般的なアドバイスや、計算の代行や検算、ましてや資金を提供しただけのような人が、共同発明者となることは絶対にありません。

問題なのは、共同発明者は実質的に発明の完成に具体的な関与をした人でなくても、特許出願をする人の裁量で自由に名前を連ねてよいとされている点です。要は、共同発明者として法定されている人を発明者として記載しなかったことは法律上問題になっても、共同発明者として法定されていない人を共同発明者として記載して特許出願をすることは、何ら問題ないのです。

共同発明

疑問に思ったら弁理士に相談を

もし、ご自身の研究で完成させた発明が誰のものかで納得がいかない主張を大学側から言われた際は、弁理士に本当のところを確認して頭の中をすっきりさせておくことが重要です。あまり公言すべき内容ではない事実ですが、日本の大学は特許法、とりわけ知的財産戦略に関しては完全に無策であることが多いというのがシナモリーガルの運営者である弁理士・中川真人の率直な印象です。そして、このような問題に頭を抱え、研究へのモチベーションそのものを浪費させている現状のTLO政策には正直憤りを感じています。

これは中小企業の知的財産戦略のアドバイスでもいつもお伝えすることですが、法律解釈をする弁護士であったり技術解釈をする弁理士は、必ず自社で準備して、常に矢面に立っておいてもらう必要があります。そのためにある程度の費用が必要なことは確かですが、日本のTLO政策の現状を見るにつけ、大学任せでよいという結論に至る研究者は少なくともこの記事をここまでご覧になってはいないはずです。

日本のTLO政策が一過性のブームで終わってしまう要因は、このような法律上の手続を蔑ろにし、よい技術で特許があればあとは勝手に大企業からお声がかかると言う一昔前の楽観論に甘えている節があると言わざるを得ないでしょう。大企業やグローバル企業と取引をする上でも、必要なのは研究者・開発者の主体性とイニシアティブです。シナモリーガルは、そのような研究者・開発者の味方として真実とグローバル市場で標準的に用いられている知的財産戦略を提供しています。まずは、シナモリーガルまで先生の疑問をぶつけてください。

ファーストコンタクト

大学の対応に疑問がある先生は、まずこちらのフォームからご連絡ください。弁理士は法律上の守秘義務があり秘密は完全に守られますので、安心して全てをお話しいただいて大丈夫です。このフォームの送信により料金が請求されることはありません。自分たちの側に立ったアドバイスには、継続相談(顧問)契約がおすすめです。ご参考に、継続相談サービスの料金を下に掲載しておきます。

個別相談 ¥ 5,500 / 60分

技術的な相談ではなく、権利が誰のものかといった帰属の問題や、報酬・ライセンス料の決定方法などに疑問がある場合を想定した個別相談です。口頭での確認が多く、まだどの書類にもサインをしていない場合であれば、できるだけ早くご相談いただくことをお勧めします。

継続相談・個人 ¥ 55,000 / 年

合計720分相当のタイムチャージを確保していただき、特許性の調査協力とともに、知的財産戦略を用いた発明の売り込みのアドバイスを継続的に提供いたします。弁理士・シナモリーガルをバックにつけておきたい先生は、継続相談・個人をご利用ください。