商標登録は、画家でいうサイン、日常生活でいう実印と同じです。私の商品であることの証明として、特定の商品名やマークを貼り付けて販売します。そして、その商品名やマークが確かに私のものであるということを証明するために、特許庁に商標登録を行うのです。
では、この特許庁に登録した商標と、それを貼り付けた商品を使って、誰に何ができるのか。詳しく見ていきましょう。
重要な取引では、実印に印鑑証明書を添えて押印することが一般的です。商標登録制度は、印鑑登録制度と同じように、商品名を特許庁に商標登録し、登録した商標を商品に貼り付け、商標登録原簿と呼ばれる証明書類を添えて「この商品は確かに私の販売している商品です」という証明を行います。
もし、あなたの登録商標が他人に無断で使われていた場合、その商品は偽ブランド品となります。その偽ブランド品とあなたの商標登録原簿を添えて警察に被害届を提出すると、または刑事告訴を行うと、あなたの登録商標を無断で使用していた犯人は、商標権侵害罪で逮捕され、最大10年の拘禁・1000万円の罰金が課され、法人には最大3億円の罰金が課される重罪となります。
一方、商標登録がない場合、誰が何にどの名前をつけて商売をしても自由です。商標登録制度は、登録原簿という紙一枚と現物一つで差止から損害賠償、そして犯人の逮捕・法人重課という、一般に想像されるよりはるかに強い効力をもつ事業の保護政策なのです。
あなたのInstagramアカウントの名称部分が無断で複製されアクセスを盗まれていた場合、商標登録制度を使えばこの偽アカウントにアカウントBANという制裁を加えることができます。
アカウント名やユーザーIDといった文字列や、アイコンの特徴的な画像を使ってアクセスをかすめ取られた場合には、その文字列の商標登録原簿、アイコンの商標登録原簿とあなたの身分証を添えて、MetaやYouTube、XにアカウントのBANを要請します。偽ブランド商品が売られている場合には、AmazonやBASE、StoresにアカウントのBANを要請します。今後、検索エンジンにも表示されないように、Googleにリンク・インデックスの削除を要請します。
この方法は、従来の訴訟による方法よりもはるかに強力です。この場合も、商標登録は特許庁に登録されていて、客観的に権利者と権利範囲を確認できるという商標登録制度の特徴が活かされています。いうまでもなく、SNS運用においても、商標登録がない名称・マークは、誰が何に使用をして運用をしても自由です。ここはお間違い無く。
無事、垢BANを達成したとしても、その偽アカウントがなければ売れていたであろう利益の額や、傷つけられた信用分の被害額は回復したいものです。また、各種プラットフォームが対応に応じてくれない場合もあります。
このような場合は、訴訟を行うことになります。すでに被った被害の回復は損害賠償請求訴訟に、これから起こるであろう侵害の事前予防対策は差止請求訴訟を行います。
訴訟は費用に加え心理負荷も強く、決してお勧めできる対応ではありません。しかし、事件解決の最終手段として訴訟はいつの時代も有効です。訴訟では、商標登録の権利範囲に加え用意できる証拠の量と質が命です。商標登録だけがあってもどうにかなるものではないので、ここは誤解のないようにしなければいけません。