公開:2025年7月7日
弁理士 中川 真人

法律違反になるサムネイル

1. 違法なサムネイル


サムネイルは、思想・感情の表現物というよりは、それ自体が「この動画を見てください」という広告としての機能を有するものだと考えられます。そのため、サムネイルでは引用という概念が成立しづらく、むしろ視聴者を混乱に導くことをやっていないかが、問題になります。

その筆頭に上がるのが、誤認惹起です。誤認惹起というのは、視聴者に「こういう動画が見られるんだな」と期待させておいて、実際は大して関係ない動画だったという場合です。そして、法律違反にすらなりかねない誤解というのが、出所の混同です。例えば、アップルの公式動画かと思って、または関連企業の動画と思って開いてみたら、全くの他人の動画だったという場合です。

2. 出所混同の量刑


ここで、商標登録をされているロゴや名前を表示して、公式と、あるいは公式と何らかの関係がある企業の動画だと勘違いさせるようなサムネイルを公開した場合は、商標権侵害事件になり得ます。では、商標登録されていないキャラクターや店舗の外観、商品写真などを使って、出所の混同を起こした場合、今度は不正競争防止法という別の法律の違反が生じます。

商標権侵害や不正競争防止法違反は、詐欺よりも罪が重い重罪で、懲役(拘禁)に加え罰金も科されます。一般に「詐欺ではないのか?」と思われがちですが、出所の混同を使って顧客を誘引する行為は、詐欺よりも罪が重い商標権の侵害や、不正競争事犯として扱うことが多いです。

3. 大丈夫な基準


まず、他人の商品名やロゴを含まない、他人の有名なキャラクターや特徴的な店舗の外観、商品写真などを使わない、百歩譲って大々的に含まないようにしてください。そして、完成されたサムネイルを見て、他の誰かが公開している公式動画と勘違いさせるような要素がないか、確認するようにしてください。

ここで、勘違いするかどうかの要素ですが、その基準は「その分野を全く知らないわけではないけど気をつけないと間違えてしまいそうな絶妙なライン」の人を選んでください。詳しい人を基準にすると「知らないのが悪い」という言い訳を許すことにもつながるので、注意が必要です。

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