公開:2025年6月16日
弁理士 中川 真人

1. 引用のルール


引用は、誰の作品で、どの本・どの雑誌に掲載されたものかを表示した上で、原文をそっくりそのままコピペすることで、ほぼ引用のルールは満たすことになります。ここで、原則は原文をそくりそのまま、改変することなく、ご自身のコンテンツと明確に区別できる形で掲載するようにしてください。無断で要約や漫画・イラスト化などをしてしまうと、翻案権の侵害が成立してしまうかもしれません。

また、引用の目的は、あくまでご自身のコンテンツで表現しようとしている思想・感情をより豊かにするために、より良いものにするために行われることが必要です。

2. 悪意ある切り抜き


引用のルールを正しく守ってさえいれば、著作権の侵害にならないかというと、そうではありません。先ほど説明した翻案の問題もありますが、引用させていただく作品がもともと持っている作者の主義・主張と反するような、またはご自身のコンテンツを引き立てるためにいわゆる「悪意ある切り抜き」のような引用をしてしまうと、引用の技術的なルールを守っていても、今度は同一性保持権の侵害という、新たな著作権の侵害が成立していまします。

これらを防ぐため、書籍や雑誌の編集部には必ず作家ごとに編集担当者が付き、背後でこのような権利関係の調整を作家間、出版社間できちんと行うようにしています。

3. 無承諾引用のリスク


出版社のように編集者による相互の根回しがない状態で、無承諾の引用を行いそのコンテンツを公開することは、一般論としていつ引用元の著作権者に著作権の侵害を主張されてもおかしくはないという認識でいることが必要です。

また、同一性保持権は著作者人格権と言って、著作権者の人格・名声・名誉を守るための規定です。そのため、いくら正確なルールに従って引用したところで、「そのような紹介の仕方をされるのは侵害・心外だ!」と言われれば、引用をした方にとってはなす術がありません。著作権はこのような思想・心情を取り扱う法律である以上、絶対に大丈夫という保証は無理なのです。

4. 著作権法に絶対はない


著作権法は、最終的にその著作物を創作した人が、心外と思うか思わないかで、侵害になるかならないかが決まってしまう要素がある法律です。そのため、通常出版業界や音楽・映画業界では、双方で「この引用なら大丈夫」という了解を事前に得た上で、複製権の許諾や著作者人格権の不行使を約束しあった状態で、さまざまなコンテンツは世に出ています。

そのため、純粋に著作権のルールのみを頼りに、他の著作権者とこのような事前契約を行っていない状態での引用、その他全般のコンテンツ事業では、他の著作権者からの侵害の主張のリスクを完全に取り除くことは不可能ということになります。

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