公開:2025年6月16日
弁理士 中川 真人

1. 動画の著作物


動画に関する著作物として、著作権法では主に(1)映画館で上映するためのもの、(2)放送事業者がテレビ放送をするためのもの、(3)コンテンツ事業者がDVDなどで販売するためのものと、大きく3つに分けて考えます。そして、YouTubeに動画をアップロードする場合の扱いは、おそらく3番目のコンテンツ事業者がDVD などで販売するためのものとなると考えられます。

著作権法では、映画館での上映用と、テレビ放送用の動画コンテンツに関しては割と手厚い規定があるのですが、それ以外の動画コンテンツは、かなり複雑な権利関係の調整が必要です。具体的にどのような権利の調整が必要か、詳しく見ていきましょう。

2. 送信可能化


YouTubeに動画をアップロードし公開ボタンをクリックする権利のことを送信可能化権といい(著92条の2)、これは著作権の一部です。YouTubeで動画を公開するには、公開する動画に含まれる全ての著作物に認められる著作権者全員の送信可能化権の行使が揃わないと、適法に動画をアップすることができません。

動画に認められる著作権者のうち、一人でも送信可能化権を行使していない状態でアップロードされた動画は侵害動画(違法アップロード)と扱われ、著作権の侵害となります。一般には、代表者を決めてその人に送信可能化権が集約されるように契約を巻きます。

3. 公開する媒体


送信可能化権の譲渡契約や許諾契約は、その内容の範囲を自由に決めて行うことができます。著作権法はあくまで動画のアップロードをするには送信可能化権が必要と決めているだけで、具体的に誰が、誰と、どのような契約をしなければならないかまでは、首を突っ込んでいません。

では、仮に動画編集者からYouTubeへの送信可能化権だけを買い取っていた場合、同じ動画をインスタグラムのリール動画に発注者が無断で転用すると、著作権の侵害(正確には動画編集者のインスタグラムへの送信可能化権の侵害)となります。

4. YouTuberは俳優扱い


YouTuberはカメラの前で演技をする人ということで、法律上は俳優の扱いとなり、著作権者とはなりません。YouTuberが台本ではなく自分で考えたことを喋っている場合、喋った内容について言語の著作権が別に認められることになりますが、映像作品としては一俳優・一演者にすぎません。

著作権法では思想・感情の創作に価値を認めていますから、結果として構成を考え、テロップの配置やコマ割りを考えて編集し、最終的に一つの動画作品を構築した動画編集者が、YouTuber本人を超えて立場的に最も広範に著作権が認められることになりがちです。

5. 契約は慎重に


著作権の譲渡や許諾に関する契約は、コンテンツ事業の根幹をなすものですから、特に慎重に巻く必要があります。文化庁などのホームページには、著作権の譲渡契約に関する契約書の雛形といったものがありますが、このような雛形をそのまま用いることはあまり好ましくありません。

なぜなら、テンプレ化された契約書は、その破り方についてもテンプレ化ができてしまいます。また、契約書の締結はそれ自体がお互いに誠実な義務の履行を約束し合う儀式・セレモニー的や役割を果たしますから、正しくあつらわれた契約書で、正しく署名しあうプロセスを踏むことが、結果として後々のトラブルを未然に回避する最善の策となります。

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