本の表紙は、本の表紙という本の内容とは無関係な、独立したグラフィックデザインの著作物です。そのため、本の表紙を掲載するには、出版社がそれ専用に用意した画像を、利用規約にしたがって「使用させていただく」という方法で掲載することになります。
本の表紙を無断で動画中に掲載した場合は、その表紙をデザインしたデザイナー、それについて著作権の譲渡を受けた出版社などが、著作権の侵害を主張することがあります。本に限らず、パッケージデザインは著作物になりえますので、注意して扱う必要があります。
本の内容を要約してテロップに出したり、読み上げたりする行為は、翻案権(著27条)の侵害になりかねません。また、引用の違反(著32条)を主張される場合もあります。
しかし、例えばYouTuber自身が心理学を研究していて、その研究成果を発表するために他人の本の内容を紹介し、引用し、そこにコメントをつけたり書評を述べることは、これらの侵害や違反に該当しません。
ポイントは、公開する動画のメインは他人が書いた本の内容なのか、YouTuberご自身の思想・感情なのか、この違いです。
翻案権の侵害や引用の違反を著作権者が発見した場合、従来は相手方(行為者ともいいます)を特定して訴訟を起こすというプロセスしかありませんでしたが、今はそれらを公開している媒体(SNSや動画共有サイト)に直接削除要請やBAN要請を行うというアプローチがメジャーになりつつあります。
弁理士は各種SNSや検索エンジンへの通報窓口情報を持っているため、違法行為の疑いがある場合はこれらの事業者に直接アクセスするルートを持っていますが、さすがに素人判断の通報は行わないので、ルールを守っているチャンネルの通報を引き受けることはありません。
人数は多くはありませんが、YouTubeや各種SNS媒体での民間のコンテンツ事業者向けに、知的財産法に関するアドバイスやチェックを行っている特許事務所・法律事務所はいくつかあります。
ネットの情報は、ご自身が詳しい分野の情報を無料でどこまで手に入れられるかという基準で考えれば、大した情報は得られないという結論になることが多いと思いますが、法律対策、とりわけ知的財産法に関しては当たり障りのない一般論ばかりです。ここは、多少お金はかかるにせよ、弁理士への相談のツテやコネクションは、絶対に持っておくことをお勧めします。