株式会社シナモンアンドブラウン
開設:2024年4月1日
公開:2025年3月2日

指示を通す方法

子どもが言うことを聞かない

D君は、とにかく人の言うことを聞かないことでご両親や学校の先生をひどく困らせていました。しかし、何人かはすぐに言うことを聞く先生や、その日の気分ですぐに言うことを聞く日もあり、イライラを募らせた周囲の大人から厳しく注意されることも多くなっていきました。

ノウハウ

D君は、ある先生の言うことは聞き入れが早く、周囲の大人は「きっとD君はあの先生のことが好きなんだろう」とか、「あの先生はきっと厳しくて怖いんだろう」という憶測を立てていました。ところが、D君本人によればそのような言動は一切見られず、その先生も取り立てて怖いと言う評判が立つような雰囲気もありませんでした。

この秘密は、先生の指示の出し方にありました。先生は「10時になったら起立します」、「先生がここに立ったら静かにします」といった、時刻や行動を基準にした条件文を含む指示を積極的に使用していたのです。

他の先生やD君のご両親は、「立ちなさい」「静かにしなさい」「片付けなさい」という、単文の指示を何の根拠も示さずに与えているだけでした。D君はその度に「なぜ?」と反発し、指示を聞く理由がないと判断して全てを退けていたのです。

コピーを割り込む可能性を上げた一言

「10時になったら」や「先生がここに立ったら」が指示を聞く理由になるのかと思われがちですが、心理学の実験では「コピーを先にとらせてください」というお願いに「急いでいるので」という理由をつけると受け入れてもらえる可能性が向上し、その理由の部分は極論「コピーをとらないといけないので」という、理由にすらなっていない理由でも、向上率に大差は見られなかったという研究結果があります。

これらは行動分析学という心理学の分野で研究が進んでおり、自分だけに向けられる「人の言うこと」は聞きたくないけど、全員が平等に課せられる「決まり」には、人は抵抗を示しにくくなるという傾向を応用した例といえます。