...「決められない」「答えない」の裏側
投稿:2024年4月3日
児童指導員がある男の子とオセロをしていたときのこと、じゃんけんで勝った児童指導員が最初の一手を打った後、対戦相手の男の子が硬直したかように動かなくなってしまいした。そして時は流れ、20分以上が経過した頃でしょうか、彼はついに最初の一手を返したのです。
普通であれば、オセロの一手など1秒・2秒で返してしまうのが当たり前ですが、この業界では「当たり前」と言った時点で私たちの負けです。オセロの一手であっても、真剣にあらゆる思考を巡らせた結果、最初に一手に20分以上の時間をかけたからと言って真剣にオセロに向き合う彼の姿勢を責めることはできません。とはいうものの、たかが遊びでやっているオセロの一手に20分もかけられたら普通の人では怒り出すか、そもそも一緒に遊んでくれなくなってしまいます。このような場合は、制限時間を設けて「5秒以内に必ず次の一手を打たなければならない」というルールをきちんと設けて、普通の遊び方を行う訓練をしなければなりませんし、将来的には(自分の意に反しても)「これはすぐに答えを返さないといけないやつだ」と自分で気づき、自分でそのルールを敷けるよう、思考プロセスの修正を行えるようになってもらわなければいけません。
「ものが決められない」「答えが遅い」「何も答えてくれない」など、私たちの普通のスピード感覚に合わせて反応を返してくれないことでストレスを感じ、どうしても子どもを責めたくなる気持ちが生じてしまうのもそれはそれで当然の感覚です。しかし、そういう子であっても20分以上待っていれば「これにする」と言って答えを返してくれるかもしれないのです。ただ、誰かがその答えや反応を待っているという状況であれば「(たとえ自分自身では不完全な状態の答えであっても)一応は何かレスポンスを与えなければいけない」という、共同生活を行うための思考プロセスを別に用意させてあげる、これが発達指導です。オセロを純粋に楽しみたいのであれば、AI相手にとことん考えて一人で楽しめばそれで済む話だからです。