特許を使って収益化を果たす方法には、大きく分けて5つの方法があります。それが、1. 供給独占戦略、2. ライセンス戦略、3. ジェネリック戦略、4. 標準化ビジネス戦略、5. 知財ミックス戦略の5つです。
特許の機能は、「誰かに行為をやめさせる」と「誰かに使わせてあげる」の究極的には2つしかありません。自分が使う代わりに誰にも使わせないか、誰かに使わせてそのライセンス料をもらうか、この選択の組み合わせで作り上げるビジネス戦略を知財戦略と呼んでいます。
文字通り、特許を受けて誰にもその技術を使わせず、自社だけで市場を独占しようとする方法が「供給独占戦略」です。日本では最も定番の特許の使い方で、多くの人が特許と言えばこの「供給独占」を思い浮かべるでしょう。
特許を受けるとその技術を利用できるのは特許を受けた貴社一社となりますから、その技術を使用した製品がヒットすればその全ての利益を独占できます。一方、供給力に課題があると、大量生産が得意な既存の大手企業の営業力にどうしても埋もれてしまうリスクがあります。
供給独占戦略は、趣味・嗜好が多様化している現代において、かなり多くの広報量・広告料が必要になりがちなので注意が必要です。
画期的な文字の入力方法を開発して特許を受けて、それを大企業にライセンスしてライセンス収入を得る。これがライセンス戦略です。供給独占戦略が日本の定番であれば、ライセンス戦略はアメリカの定番といえます。
ライセンス戦略を成功させるには、特許を受ける段階から「他人に貸す」という前提で権利を設計するという点が重要です。自分が住む用の家を設計するのと賃貸物件として他人に貸す用の家を設計するのでは、建具の選定から設計の仕方までが大きく変わってくるように、特許であっても他社に貸しやすく、いざという時は修繕もしやすい権利の作り方というものがあります。
特許法にはライセンス料の設定方法は規定されていません。全て当事者の交渉と契約で決まります。アメリカでライセンス戦略が人気なのも、司法文化が浸透し当事者の交渉と契約で収益が決まるという性質と相性がよかったという事情もあるでしょう。その点、日本でライセンス戦略を成功させるには、私たち弁理士の注意深い権利の設計力と、交渉を有利に進めるための事前準備が何よりも重要と言えます。
特許は20年で消滅します。この消滅した特許や大企業が途中で放棄して消滅した特許を集めてまた新しい商品開発をして売り出す方法をジェネリック戦略といいます。医薬品業界ではジェネリック医薬品として広く有名ですが、医薬品に限らず特許が切れた技術を再利用して作られる製品というのはどの分野においても実現可能です。
ジェネリック戦略は、いわば2020年代の中国の定番といえます。中国といえば「世界の工場」と言われるほど世界各国の製造業が中国に工場を建設して大量生産を行っていましたが、今は中国企業が自らオリジナル製品を開発するようになり、対等な競合関係に立つという状況になっています。
それに一役買ったのが、日米欧で特許が切れた、または日米欧の大企業が途中で放棄した特許の再利用というジェネリック戦略でした。特許が切れたといっても既に2004年〜2005年の技術です。当時の技術を使って性能はそこそこに、趣味・嗜好が多様化している現代においていかに顧客の心を掴む商品を開発するか、ここにジェネリック戦略の面白さがあります。
A4という紙のサイズ、タイヤの大きさ、USBコネクト端子、Windows、アドビ、LINE登録... 本人の好むと好まざるとに関わらず「みなさんそうされています」という圧力を最大限に利用するのが現代最強のビジネス戦略として君臨している標準化ビジネス戦略です。
標準化ビジネス戦略は「本人の好むと好まざるとに関わらず...」という点からも分かるように、気を付けて取り掛からないと談合や優越的地位の濫用といった独占禁止法違反という問題を抱えることにもなりかねない、非常に強力で巨額のお金が動くビジネス戦略だということがお分かりいただけると思います。
この標準化ビジネス戦略に、特許権の力を混ぜてさらに強化しようというのが知的財産戦略としての標準化ビジネス戦略です。そのエッセンスを知り、まずは小規模なサークルを作るところから始めてみましょう。シナモリーガルが成功するSNS戦略として提供している会員制ビジネスモデルの構築サービスが、まさにこの標準化ビジネス戦略のエッセンスと同じものです。
私はデザイン、私は製造、私は販売... と、それぞれの得意分野を出し合って一つの事業体を作るビジネス戦略が知財ミックス戦略です。デザイナーは意匠権を、エンジニアは特許権を、マーケッターは商標権をそろぞれ持ち寄ってお互いにライセンスをし合い、生まれた収益からそれぞれ利益を分配します。
この権利者同士が合弁することをジョイントベンチャーと呼び、生まれた収益からそれぞれ利益を分配することをプロフィットシェアと呼びます。雰囲気から見て分かる通り、知財ミックス戦略はライセンス戦略の一形態でもあり、その主戦場はもちろんアメリカです。
知財ミックス戦略は、リーダーのいない組織として「ティール組織」であったり「週4時間だけ働く」といったアメリカでベストセラーとなったビジネス書の提唱しているビジネスモデルの定番と言えるものです。個人の力を眠らせがちな日本では、フリーランス新法の成立も相まって知財ミックス戦略の活用がさらにやりやすくなっています。
特許は持っているだけでは何の収益も生み出しません。特許を使って市場を独占したいのか、誰かにライセンスをしてライセンス収入を得たいのか、はたまた特許の切れた技術を使って新しい製品を開発してヒットを生み出したいのか、それぞれの希望に即した戦略を立てて、警察や裁判所までをも動かせる特許権の力を使わない手はありません。
長らく日本では「特許は持ってるだけで価値があり、自社で製造してこそ意味がある。」といった、供給独占戦略一強の時代が続いていましたが、少しずつライセンス戦略やジェネリック戦略といった、新しい活用法が主に中小企業や個人事業主のフリーランスの方から徐々に広がっています。
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